ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0003

「ところでマーちゃんよ、今日は何を食う!?」

「……フルーツ・グラノーラを一皿」

「あいよ! 相変わらず声が高いなぁ!」

 余計な口を叩きがちなのがトウヨウの悪いところだ。しかし、トウヨウは、いつも良質なグラノーラを出してくれる。だから殴り倒さない。たまに牛乳もサービスしてくれるし。

 そう言えば、飲み物を頼み忘れていた。

「おら、いつものフルグラだぜ! それとコイツはサービスだ! しばらくウチには来れないんだし、じっくり味わっとけよ!」

「!!!」

 デカい声と共に、大皿に入ったグラノーラが運ばれてきた。ついでに渡されたグラスには、牛乳とオレンジジュースを混ぜた飲み物が入っていた。それを見た俺のテンションは爆上がり。やはりトウヨウは分かっている。お前がナンバーワンだよ。魔王もお前が倒しに行け。

「さて……ッ!?」

 いざ、グラノーラを食べようとしたら、肝心のスプーンが用意されていないことに気付いた。トウヨウ、お前ちょっと疲れてるんじゃないのか?

 カウンターにいるはずのトウヨウに視線を送ったが、彼はすでにどこかに行っていた。おそらく便所だろう。用を足した後、ちゃんと手を洗っているといいが……。

「ワリイ、スプーン忘れてたよ! マーちゃん!」

 半分近く食べ終わった頃になって、ようやくトウヨウがスプーンを持って来た。やはり一度は殴り倒しておくべきだろうか? 数秒だけ逡巡した後、俺はグラノーラの捕食を再開した。さしもの運命の戦士も、グラノーラ欲には逆らえないのだ。

「よし……」

 食事を済ませた俺は、酒場の様子を伺うために首をグルリと回してみた。今日も人だらけだ。うるさくて少しイライラしてきた。全員を殴り倒してもよかったが、面倒なのでやめた。ちなみに、俺はこの酒場で金を払ったことがない。全てツケにしてもらっている。本当にどうでもいいことだ。どうでもよすぎて、こんなことを思い出した自分の脳ミソに謝りたいくらいだ。

 

 つづく。