ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0007

 夢なう。

 何かよく分からないけど、宙に浮いてるなう。自分の意思では動けない。

「一体どうして……何故なんだ!?」

 俺の声だ。イケボだなぁ。

「答えろよ、ジャギス!!」

 どうやら俺はジャギスと話しているらしいよ。

 俺とジャギスの二人が、剣を持って対峙している。

「分からないのか、サマヤ?」

 分かった。いや、ジャギスの質問に答えたわけじゃない。現在の状況について。つまりこれは、過去の出来事だ。わざわざ夢にまで見て、思い出させてくれてるんだね。俺はちょっとだけ、自分の高性能な脳ミソを憎んだ。

「くっ……行かせないぞ!」

 うんうん。色々と考えてみても分からないから、俺はとりあえず斬り掛かったんだよね。運命の戦士らしい、潔さに満ちた行動だ。

「甘い!!」

 ジャギスは俺の剣をあっさり受け流し、そのまま俺の隙だらけの背中に蹴りを入れた。俺の身体が吹き飛び、近くの瓦礫に頭から突っ込む。これは痛かったなぁ。運命の戦士にも弱点はある。俺の場合は頭。頭頂部ね。

「どうした。お前は運命の戦士ではないのか? ならば、オレを止めてみせろ!」

 そんなことは言われなくても分かっていたけど、この時は俺よりジャギスの方が強かった。まあ、俺は本気出してなかったし? 多少はね? 多少はやられてもね? うん。そういう日もあるよね。

 ……次は殺す。

「う、うっ……うおおおおお!!」

 勝負の結果は予想できた(というか過去に自分が経験したことなので知っていた)が、夢なので早送りできるわけでもなく、そもそも自分の意思では思考以外は何もできないんだった。夢の中というのは、クソみたいな世界だ。

 端的に言うと、俺は負けた。

「残念だよ、サマヤ……」

 とだけ言い残し、ジャギスは俺の元を去った。そして、いつの間にか奴は魔王になっていた。当の俺はと言うと、ジャギスが自分を裏切ったのがショックすぎて、しばらく寝込んでいた。

 ジャギスが何のために魔王になったのか。その理由を知っているのは、この世界では俺だけだ。知りたいか? 知りたい人は、俺に金を払え。そしたら教えてやる。たぶんね。

 

 つづく。