勇者サマヤ物語 0009
道中、謎の集団と遭遇した。
十人くらいの男達だ。それぞれが短剣を携えており、動きやすそうな服で身を包んでいる。何人かは短剣を懐に隠しているようだが、運命の戦士たる俺にはバレバレだ。
大貴族の私兵団か、私設の盗賊団か……そのどちらかに見える。いずれにせよ、こちらに危害を加える気はなさそうだったので、フルシカトで走り去ることにした。少しでも敵意や殺気を向けてこようものなら、あっという間に全滅させてやろうと思ったのだが。
しばらくゲイを走らせていると、前方に看板のような何かが見えた。近付くにつれ、その何かの様子がハッキリと見えてくる……やはり看板だった。言うまでもないことだろうが、運命の戦士は視力にも優れている。
「止まれ、ゲイ!」
看板など無視して進もうとするゲイを制止し、俺はゲイの背中から降りた。
『この先、シノアリの町』
看板の表側には、達筆でそう書かれていた。俺は興味本位で看板の裏側に回った。
『この面はおれが盗んでやったぜ!
つまり、おれのもの〜! by 盗賊ナミハ』
しょうもないことをする奴がいたもんだ。俺は呆れ顔で、看板の裏側にツバを吐きかけた。そして俺は軽快な動作でゲイに乗り直し、シノアリの町へと走り始めた。ちなみに、走り始めたのはゲイだ。たぶんもう少しで着くから、ゲイ、頑張れよ!
つづく。