ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0012

 腹が減ったので、町を出る前に食事処に向かうことにした。

「えっ、サマヤさん? どこに行くんですか?」

 うるさい、黙ってろ。とは言わず、丁寧に解説してやる。この優しさを全国の諸君にも見習って欲しい。おお運命の戦士であるサマヤよ! 汝は……いや、ちょっと今回はここまでにしておこう。

「まずは飯だ。朝から何も食っていないんでな。何か食わないと、途中で倒れてしまうかも」

 嘘だ。実は、ゲイが食べていた赤い果実、あれを俺も食べている。あまり美味くはなかった。

「な、なるほど。腹が減っていては、邪竜とは戦えませんものね!」

 その通りだ。分かっているなら俺の行動に口を挟むな、愚か者が。俺の奥義『秘剣・インコブレード』で真っ二つにするぞ。ちなみにインコブレードとは、俺の魔力を結晶化させて生み出す雷剣のことで、その威力たるや絶大である。具体的に説明すると、城くらいの建造物なら簡単に両断できる程度の威力を持つ絶技だ。この剣には第二形態もある。そして最も重要なのが……『ウ』ンコブレードではない、という点だ。名前を間違えた奴は漏れなく皆殺しにしてきたので、君達も気を付けた方がいい。

 話を戻すが、そもそも、戦う相手が邪竜だけではない可能性もある。

 納得したような、していないような、そんな微妙な表情のスカミットに、とりあえず食事処へと案内させた。すると連れて行かれたのは、『マルキュー食堂』という場所だった。やけに派手な外装だ。

 そこで昼食を済ませた(支払いはスカミットに任せておいた)俺達は、宿屋に戻ってゲイを連れ出し、二人と一頭で洞窟を目指すことにした。ゲイはスカミットを背中に乗せたくなさそうに暴れていたが、再び宿屋の主人に頼んで赤い果実を食わせてやると、すぐに大人しくなった。まったく単純な馬だ。

 俺がゲイに話し掛けていると、後ろからスカミットがこう訪ねてきた。

「サマヤさん、さっきから馬と話しているようですが、その馬は人語を理解できるのですか?」

「ああ。さっきみたいに、自分の意思を示すこともできる」

「なんと……凄まじい賢さですね! 運命の戦士たるサマヤさんに相応しい馬だ! アッハハハ」

 何が笑えるのかは理解できなかったが、とりあえず微笑んでおいた。変な奴だ。ところで、どうしてコイツは俺が運命の戦士であることを知っている? ミナカタから聞いたのだろうか。まあ、いいか。問題があるようなら殴り倒せばいい。

 このような下らない会話の後、俺達は洞窟に到着した。

 

 つづく。