ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0013

 後でスカミットに訊ねてみたところ、例の赤い果実は『イノカリ』という名前らしい。噛むと果汁が口内に広がり、独特の味と香りを感じさせてくれる。腹が減って仕方がない時に食べると、多少は美味いと思えるかも知れない。そんな味だ。

 そんな話はどうでもよろしい。とにかく俺達は洞窟に着いたのだ。ゲイをテキトーな場所に隠し、入口付近の様子を見る。

「スキルメソッズの連中は、もう中にいるのでしょうか?」

 スカミットが訊ねてきた。お前バカか? いるに決まってるだろ、俺達の何時間前に出発したと思ってるんだ? まだ奴らが生きてるかどうかは知らないけどなァーハッハッハッ!!

 いや失敬、軽いサマヤンジョークだよ。

「とりあえず、中に入ろう」

 魔物の気配は感じられない。先に洞窟へ入ったスキルメソッズが倒しておいてくれたのか、それとも……。嫌な予感がする。

 そこで異変を感じた俺が立ち止まると、後ろを歩いていたスカミットが、俺の背中にぶつかってきた。

「痛っ、つぅー……どうしたんですか?」

 こっちも痛かったから、お互い様だ。

「何か来る。大勢だ」

「ええっ!? 敵でしょうか!?」

 俺が言うと、スカミットは慌てて剣を抜いた。お前のことは戦力としては数えていないから、戦闘が始まったら隅の方でじっとしておいて欲しいものだ。剣など抜くな、危ないだろう。

「あ、彼らは……!」

 果たして、現れたのはスキルメソッズの連中だった。スカミットの反応で分かった。分かりやすい奴らは好きだ。もっと分かりやすい反応をしてくれると助かるよ。

「お前達、一体どうした?」

 俺が訊ねると、先頭にいた男が反応した。

「かっ、頭がまだ奥に……! 一人で邪竜と戦ってる! 誰か、助けを!」

 男達は満身創痍で、移動するのも辛そうな程の傷を負った者もいた。この人数で邪竜に挑んでそのザマとは、まったく情けない盗賊団もあったものだ。それとも、邪竜がよっぽど強いのだろうか。ちょっと楽しみだ。

 

 つづく。