ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0015

 片方の翼を両断された竜は、あっさりと戦意を喪失し、ウンコブレードによって絶命させられることとなった。ネーミングが幼稚だと感じた人もいるだろうが、俺はこういう人間なので、気にしないで欲しい。もう一度言うが、俺はこういう人間だ。これまでも、これからも。何かこれ名言っぽいな。

「ふう、何とか倒せたか」

 よくやった。俺は心の中でナミハに賞賛を送ると、その手の中にあったウンコブレードを消した。ウンコはさっさと消してしまうに限る。

「何者か知らないけど、助かったよ」

 ナミハは額に浮かぶ汗を腕で拭った。

「気にしなくていい。お前の部下達だけど、今頃は洞窟の入口に着いてると思う」

 そう教えてやると、ナミハは安堵の表情を見せた。そうだ、俺に恩義を感じろ。俺の言うことに逆らえなくなれ。

「よかった! 無事に逃げ切れたんだな」

「というわけで、本題に入らせてくれ」

 俺はナミハに様々なことを話した。別口で邪竜討伐の依頼を受けたことや、剣を渡すだけで討伐を間接的にしか手伝わなかった理由、そして魔王討伐を目指す仲間を探していること……全てを話すのに五分くらい要した。話しすぎて疲れた。慣れていないことは、あまりしたくないものだ。

「なるほどな。アンタはおれを試したわけだ」

「少なくとも、お前が死なないという確信はあった。お前は竜との戦闘を楽しんでいる節があったし、となると魔王討伐にも興味くらいはあるんじゃないか?」

「確かにアンタの言う通りだね。今回、スキルメソッズが邪竜討伐に乗り出したのも、おれが自分の力を試したかったからだし」

 やはり、俺が睨んだ通りだ。ナミハは力を持て余している。スキルメソッズの部下達と共に洞窟に来ていたのは、大方、一人で邪竜に挑もうとしていたのが部下にバレて、連れて行かねばならなくなったのだろう。

「魔王討伐か。楽しそうだし、おれも行くよ」

「スキルメソッズはどうするんですか?」

 そこでスカミットが会話に割り込んできた。俺の台詞を奪うとは。許し難い愚行だが、ここはグッと我慢してやった。この場にナミハがいなければ、今頃スカミットは血だらけになって地面に転がっていることだろう。そう言えば、例の貼り紙を作ったのはコイツなんじゃないか? バカの極み野郎め。

「アイツらは置いて行くよ。ガキじゃないんだし、おれがいなくても生きていけるだろ」

 なかなかドライな奴だな。

「……そうか。助かるよ」

 もちろん、ナミハが俺と共に来てくれることが、という意味だ。ぶっちゃけ足手まといを増やしたくないという思いもあるにはあったが、ほんのわずかだけだ。ほんのわずか。どのくらいわずかなのかと言うと……。

「よし、じゃあシノアリの町に戻ろう!」

 俺のモノローグは、ナミハの言葉によって勢いを失ってどこかに不時着したっぽい。

 

 つづく。