ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0017

 ミナカタの言葉通り、夜には派手な宴会が開催された。それより少し前に、シノアリ流のオモテナシとやらも受けた。内容は具体的には書けないが、なかなかにグッドな経験ができたということだけは言える。つまり、ミナカタが勧めてくれた高級娼館をタダで利用できたのだ。

 宴会の最中、一人で牛乳とオレンジジュースを混ぜた飲み物を楽しんでいると、見知らぬ老人が声を掛けてきた。

「君が邪竜を倒したという青年かね」

 高価そうな服装に、きちんと手入れされた長い髭。髭を綺麗な状態に保つのは、貧乏人には不可能である。間違いない、コイツは上級市民だ。

「…………、」

 ミステリアスな雰囲気を出すため、あえて声は出さず、首を縦に振るだけの返答で済ませておく。老人が相手でも、俺は決して油断しない。

「私はウコメタ・ファザーという者だ。このシノアリの町長をやらせてもらっている。よろしくな」

 聞きましたか? 町長だって。すごい。

「サマヤ・シコモザです」

 運命の戦士やらせてもらってます。

「この度は本当にありがとう。シノアリの町を代表して、お礼を言わせてもらうよ」

 そんな、当然のことをしたまでです。二頭の邪竜を倒したのはナミハですが。

 ここで思い出したのだが、どうやら邪竜は二頭いたようだ。考えてみれば、ナミハは一人でも戦えていたのに、部下達が傷を負っていたのは不可解だったのだ。話が逸れているので、後できちんと語り直すかも知れないけど、たぶん忘れてるから、思い出させてくれ。よろしく頼んだよ。

「話は変わるが、私には君と同じくらいの歳の息子がいてね。息子も君と同じように、世界を旅して回っているんだ」

 まだ俺は故郷を出て間もないし、旅をしているとは言えない気分なのだが、とりあえず感心したように頷いておいた。老人が相手でも俺は油断しない。媚を売るチャンスがあれば、しっかり売っていく。そしてあわよくばお小遣いをいただく。

「いつか君と息子が出会うこともあるかもな。ハッハッハ」

 何も面白くないので、俺は愛想笑いを浮かべた。会ったらボコボコにしといてやるよ。俺の崇高なるドリンクタイムを邪魔してくれおって、お前があと三十歳も若ければ殴り倒していたところだ。

 こんな感じで、シノアリの町での夜は更けていった。仲間も増えたことだし、さっさと次の町を目指して旅立ちたいです。

 

 つづく。