勇者サマヤ物語 0019
宿屋を出て、ナミハと合流した。やはり体調は悪そうだが、準備はきちんと済ませていたようだ。ところで、昨夜の出来事は覚えているのだろうか。いつか突っ込んでみてやろうと思う。
「スキルメソッズの連中とは、もう話したか?」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
よし。さっそく出発しよう。
「待って!」
俺達が町を出ようとすると、後ろから誰かが走ってきた。声から察するに男だ。応対はナミハに任せよう。
「お前……コチ」
「知り合いか?」
「部下のヒロコチだよ。コチって呼ばれてる」
ふーん。見た目は気弱そうな少年だな。
「ナミたん……本当に行くの?」
えっ? ナミたんってナミハのこと?
「ああ。昨日も言ったけど、おれがいない間、スキルメソッズは任せたぞ」
こんな子供に任せるとは、スキルメソッズは人材不足なのだろうか。と、一般人なら考えるだろう。だが運命の戦士は違う。俺は即座に、ヒロコチの実力を把握していた。コイツは俺やナミハ程ではないが、なかなかに強い。
「…………、」
見るからに行って欲しくなさそうだが、お前の私情よりは魔王を倒すという使命の方が重要なのだ。お前は黙ってナミハの帰りを待っておけ。
「悪いな。もう決めたんだよ、コチ」
まあ初対面の子供にここまで言える程に鬼畜なわけではないので、俺は黙っていた。
「分かった。俺、待ってるよ! ナミたん」
この茶番、必要だったのか?
てかお前、部下にナミたんって呼ばれてるの? それ面白いね。アットホームな盗賊団だね。俺はナミハを見て少し笑ってしまった。
あー、ようやく出発できるよ……。クソがよぉ!!
つづく。