ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0020

 ここ数日で、たくさんの文章を書いたので、ちょっとした腱鞘炎になったような気がする。いや、そこまで大袈裟なものではないか。たまにピキッと痛むだけだ。運命の戦士である俺は、つまりは小説家ではないので、筆を取って字を書くことには不慣れである。俺の本来の趣味は、官能小説を読むこと、そしてその内容に関する評論を友人と交わすこと、なのだ。ここで言う友人とは、主にトウヨウのことだ。

 俺の趣味の話など、今はどうでもよろしい。シノアリの町を発った俺達は、とりあえず南へと向かっていた。スカ何ちゃらが言っていたように、東にあるエフジョーの町に向かったりはしない。俺は自由な男なのだ。モブの言葉に縛られたりはしない。

 まあ、女性に縄で縛られて責められるのは好きだし、運命にはガチガチに縛られてるけどね。運命の戦士だから。てかアイツの名前って何だっけ? スカトッロ?

「なあ、サマヤ。魔王ジャギスとやらを倒すのはいいんだけど、居場所は知ってるの?」

 ゲイを走らせながら下らないことを考えていると、後ろに座るナミハが話し掛けてきた。

 どうでもいい話だが、『ジャギス』というのは魔王としての名であり、奴の人としての本名は『ヴァロク』という。その名を知る者は、俺以外は既に皆殺しにされたので、今では俺しか知らないことである。本当にどうでもいい話で申し訳ない。

「分からない。ジャギスは影の中に潜んでいるから、通常の手段では見つけられないはずだ」

「影の中に!? 暗い奴だなー」

 確かに。『ジャギス』は昔からそうだった。

「だけど、いくつか目星は付いてる」

「マジで? どの影にいるのかがある程度は分かってるってこと?」

「そういうこと」

 ジャギスが言うには、影にも質があるらしく、より高等な存在が生み出す影は、より良質なものとなるようだ。つまり、運命の戦士という称号を持つ俺の影なんかは、世界でも有数の居心地の良さを誇っているであろう、ということだ。入ったことはないので、自分では分からないが。逆にトウヨウなんかの影の中にいたら、徐々にアホになってしまうかも知れない。たぶんそんな感じだろう。

「ヤモト神殿とか、世界樹とか、賢者キュエリムの像とか、そういう物が生み出す影が怪しい」

 それらは世界中に散らばっているため、俺達はジャギスの住処を探して色々な場所を巡らなければならないのだ。クソが付く程に面倒だから向こうから出てきて欲しいものだが、魔王には魔王の美学もあるだろうから、運命の戦士が出向いてやるのだ。感謝しろ、ジャギスめ。

 

 つづく。