勇者サマヤ物語 0022
前のページで、いきなり聖書の話をした理由はと言うと、シノアリの町を出る時、ナミハが文庫化された聖書を持って来ていたからだ。呪文によって縮小化されたコピー本なので、簡単に持ち歩けるらしい。ただし、ナミハ以外に本の所有権が移ると、本は消えるとのこと。どうして、そんなどうでもいい制約を付けた?
「好きなのか? 聖書が」
「うん。昔からの習性みたいなもんで、三週間に一度は読み返すんだ。変わってるかな?」
「そんなことはないと思うけど」
俺も三週間に一回は床オナするしな。
以上だ。
野営の準備中、五匹くらいの魔物に襲われた。この程度の魔物の群れなど、弱すぎて経験値にもならない。ナミハに俺の力の片鱗を示すため、魔物達を瞬殺したら、ナミハは口をあんぐりと開けて驚いていた。お前もなかなかに分かりやすい奴だな。
「サマヤ……お前、そんなに強かったのか!」
今頃、気が付いたんですか?
「まあ、運命の戦士だしね」
しかし、世界最強(たぶん)の人間である俺には、致命的な欠点がある。それはスタミナだ。魔王軍との戦いに敗れて撤退する際、色々なものを犠牲にした。その内の一つ、そして最も大きな要素が、俺のスタミナだった。要するに、すぐバテる。短期決戦のタイマンなら未だに得意なのだが、長期戦になりがちな一対多の戦闘は苦手なのだ。俺が仲間を探している理由はそこにある。
過去の戦いにおいて、俺は魔王軍のほとんどを殲滅したが、肝心の魔王ジャギスには勝てなかった。ジャギスは魔王軍を再編し、いつか来るであろう俺との再戦の日に備えているだろう。今はその準備期間なのである。理解できたか?
俺はテントの中でさっさと眠りに就いた。ナミハは知らん。テントも別々だし。トレーニングの一環として、外でスーパーダンスでもしているんじゃないかな。
つづく。