ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0023

 起きた。

 何だか暑いと思ったら、テントが燃えている。これは危ないよね。とりあえず俺はテントを出て、周囲の状況を把握するために、その場でグルグルと回ってみた。あ、ナミハのテントもバッチリ燃えてる(笑)

 腹具合から判断するに、現在時刻は午前四時頃か。テントが燃えていること以外の異状は見受けられなかったので、俺は身体の回転を止めた。うっぷ。ちょっと気分が悪くなった。回すのは首から上だけにしておくべきだったか。

「ナンダナンダ!?」

 ナミハがテントから出てきた。素っ裸だ……と思ったら、パンツだけは履いていた。見た感じ、割と鍛えてるみたいだな。ゲイ(馬ではない)やホモが見たら喜ぶ肉体だと言えるだろう。あれを一朝一夕で作り上げることは不可能。長期間、少なくとも数年以上の弛まぬ努力が積み重なり、今のナミハの筋肉が出来上がったはずだ。何で俺はこんなにナミハの身体について語ってるんだろう。気持ちが悪い。気分も悪い。

「ナア、さまや! ナンデモエテルンダ!?」

 ナミハの喋り方が変だ。寝る前のスーパーダンス中、変な物でも食べたのか? 少しは自重してくれ。

「シカモナンカ、ウマク、シャベレナインダガ! ナンダコレ!?」

 敵の攻撃か。俺は腰を落とし、臨戦態勢を整えた。

「ハッハー!! アーッハッハッハッ!!」

 大きな笑い声と共に、何者かが近付いてきた。

「ダレダ!?」

「僕はアシガム! お前達の狙いは分かってるぞ。残念だったな、盗賊共め」

「…………、」

 現れたのは、アシガムと名乗る青年だった。長い槍を持っている。テントを燃やされた理由、盗賊呼ばわりされた理由、アシガムが推察しているであろう俺達の狙いとやら、これらの三点が分からない。推測するのも面倒だし、さっさとアシガムをボコって吐かせるとするか。

「ナア! コノ、オレガウマクシャベレナイノモ、オマエノシワザナノカ!?」

 あーそうそう、ナミハが変な喋り方になっている理由も不明だった。俺にとっては少し鬱陶しい程度の、どうでもいいことなので無意識の内に頭から消していた。BANしていた。

「そうだよ。気持ち悪いから黙っててくれる?」

「ナ……ナンナンダオマエ! フザケンナ!」

 自分でやっておいてこの言い草とは。なかなか面白い奴だ。俺はアシガムが少し気に入ってしまった。今のナミハは確かに気持ち悪いから、さっさと元に戻して欲しい。そのためには、俺とアシガムの意思疎通が必要不可欠。運命の戦士は人と話すのが好きではないのだが、仕方ない……。

 

 つづく。