ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0025

 そうだ、混同してる人がいるかも知れないから言っておくけど、これまでの話に出てきた『魔法』と『呪文』とは同じ存在だからね。二通りの表現があるってだけ。これに関しては俺の描写に問題があったので、素直に謝罪です……とか言うと思ったか? 解説してやっただけありがたいと思えよ。

「で、お前達はここで何を?」

 さて、こちらの素性は明かしたので、今度は彼らの素性について詳しく知っておきたいものだ。こちとらテントを二つも燃やされたんだし、それくらいの償いはしてもらわないと。

「僕とキュウさんは、この近くにあるブルグラ王国の王室から、とある依頼を受けててね」

 アシガムが語り始めた。キュウは寝ている。

 ブルグラ王国の名は何度も聞いたことがあった。俺の故郷、ストンモ王国よりも遥かに大きな国だ。フルグラに似た名前で美味そうだと思った記憶がある。国王のジェゴルンがアララキと昔からの友人で、両国間での交易は現在も盛んに行われているはずだ。子供の頃、よくブルグラ名産のペリスコという果物を食べていたのが懐かしい。

「どういう依頼なんだ?」

「最近、ストンモ王国に向かう行商人達が、盗賊団に襲われるという事件が散発していてね。人的被害は出てないけど、いくらか金目の物を奪われているらしいんだ」

 俺はナミハを見た。ナミハはそっぽを向いた。

「荷を根こそぎ持って行かないのが彼らの特徴なんだけど、その理由は分からない」

 俺はナミハを見続けているが、ナミハはそっぽを向き続けている。

 覚えていたら、後で問い質そう。

「で、その盗賊団を実力で叩き潰すように頼まれて。しばらくこの辺りを張ってたら、怪しい二人組がキュウさんのレーダーに引っ掛かったから、様子を見てた」

「そうなんです。わたしが見つけたんです」

 いつの間にか起きていたキュウが、アシガムの説明に割り込んだ。何なんだ、この子は。何で寝ていたのかも分からないし、何でこのタイミングで起きたのかも分からない。自由すぎる。

「そしたら、その二人組は、襲ってきた魔物の群れを瞬殺してたじゃないか。パッと見だと完全に危険因子だったから、早めに排除しておこうと思った」

 瞬殺したのは俺だな。強すぎたから目を付けられたのか。俺レベルの強者ともなると、他人から恐れられるのも無理はない。寝込みを襲って、そのまま殺っちまおうと思ったわけだ。もし仕留め損なっても、キュウなら大抵の奴には勝てるとアシガムは読んだ。確かに、全力を出したキュウと戦ったら、無傷では勝てないだろう。運命の戦士でも。

 

 つづく。