ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0030

 皆さん、お久しぶり。運命の戦士だよ。ちょっと運命に弄ばれていたせいで、しばらく筆を取れなかった。許してくれ。本当はお前達に許しを乞う必要などないのだが、今日は謝りたい気分なのだ。

「今日もアソコ亭のラーメンは美味しかったですね」
 あの後、キュウは三杯目のラーメンを完食及び完飲し、四杯目を頼もうか悩んでいたが、さすがに俺が止めておいた。そんな歳からラーメンを食べまくっていると、いずれ必ず身体を悪くしてしまうと思ったからだ。まあ、もう手遅れかも知れないが。
「毎回あのくらい食べるのか?」
「いえ。いつもは二杯目で満足します。今日はサマヤさんと一緒だったので、少しテンションが上がってしまいました」
「そうなのか……」
 よく分からない子供だ。
 食後の軽い運動と観光とを兼ねて、俺達は街の中を歩き回った。途中、キュウが何軒かの店で買い食いをしようとしたので、腹持ちの良さそうな食べ物を買い与えておいた。ラーメンだけに限らず何でも食べたがることから、基本的に胃袋が大きいらしい。その小さな身体のどこに、あれだけの食べ物が収まっているのだろうか。
 さて、そろそろ一時間が過ぎた頃か。ナミハ達と合流するとしよう。俺達は王城へ向かった。そう言えば、色々と訊ねたいことはあったのだが、キュウが常に何かを食べているので、ゆっくり喋る間もなかった。さっきまでは普通だったのに、何なんだその食欲は? アソコラーメンを食ってたら、そんな風になってしまうのか?
「あ、もう出てきてますよ」
 王城に近付くと、まだ様子が見えてもいないのに、確信しているかのような調子でキュウが言った。微かに魔力の流れを感じる。未来予知か、広域探知か、そんな感じの魔法を使ったのだろう。そのような魔法を何の気なしに使えていることから、キュウの魔法使いとしての実力の高さが窺える。ガチンコで戦えば、俺の方が間違いなく強いだろうけど。殺し合いなら、いつでも受けて立つぞ。

 

 つづく。