ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0031

 音よりも光の方が高速なのは普遍の事実だが、魔力との速度関係となると、お前達のような凡人の知見が及ぶ領域ではないだろう。先述したように、魔力にも流れが存在し、それは術者の特徴を表していることが多い。優れた魔法使いであれば、術者から放たれた魔力の流れから、その意図や感情を読み取ることすら可能だ。

 「おお、キュウさん、サマヤさん」
「お待たせしてすみません。色々と食べ歩いていたので、少し遅れてしまいました」
「いいよ別に。美味しかった?」
「はい。今日もたくさん食べました」
 確かに、キュウはたくさん食べていた。しかし、あれだけたくさんの料理を食べたのに、腹が膨らんでいるようにも見えない。いやはや奇妙な身体である。然るべき施設に送り、その構造を研究させてみたいくらいだ。
「王室からの報酬ね。全部で十万ゴールドあったから、山分けして五万ずつ」
「ありがとう。いいのか、半分も?」
 一応ね。一応、訊ねておく。お金の問題はデリケートだからね。みんなも気を付けるんだぞ。お金は人を変える。
「もちろん。気にしなくていいよ」
 さて、報酬として五万ゴールドを手に入れた。実際は何もしていないのだが、もらえる物はもらっておこうの精神で生きているので、断ったりはしない。これで当面の旅費にも困らずに済むだろう。とりあえず娼館にでも行きたいところだが、まだ昼なので我慢しなければ。
「じゃあ、僕達はこれで」
 この国での用は済んだのか。
「え、もう行っちゃうのか? せっかく知り合えたんだし、今夜、一緒に飯でも食いに行こうよ」
 と、ナミハ。
 俺は生来、他人と関わるのは好きじゃないが、これは悪くない提案だと思った。この二人を気に入ったからだ。しかし、俺にはアシガムの返答が予想できた。
「やめておくよ。先を急いでるんでね」

 やはりな。ナミハと共に飯を食うのは気が引けたのだろう。
「そうか……」

 ナミハは残念そうに項垂れた。
「それに、君達とはまた会える気がするからね。食事はその時にしよう」
「分かったよ。じゃあ、またな」
「はい。さようなら」
 というわけで、アシガムとキュウはどこかに旅立った。手を繋いで去っていく二人の関係が気になったので、次に会った時に訊ねなければ、と俺は決意を新たにした。さて、今後の行動についてだが、俺達はしばらくブルグラ王国に留まり、今後の計画を練っておくことにした。した。した。した。そんな感じだ。

 

 つづく。