ペンは剣よりも強し。

頭に浮かんだことを気ままに書いていきます。

勇者サマヤ物語 0014

 奥に進むと広い空間に出た。そこでは、赤黒い鱗を持つ竜と一人の男が、激しい戦闘を繰り広げていた。竜の方には目立った外傷はないし、特に疲労しているわけでもなさそうだ。対して男の方は、大きな傷はないものの、汗だくで疲労困憊といった様子。どうやら、手持ちの短剣では竜にダメージを与えられないらしい。事前準備が甘すぎる。相手が竜だと分かっているのに、どうしてもっと大きな武器を用意しないのか。

続きを読む

勇者サマヤ物語 0013

 後でスカミットに訊ねてみたところ、例の赤い果実は『イノカリ』という名前らしい。噛むと果汁が口内に広がり、独特の味と香りを感じさせてくれる。腹が減って仕方がない時に食べると、多少は美味いと思えるかも知れない。そんな味だ。

 そんな話はどうでもよろしい。とにかく俺達は洞窟に着いたのだ。ゲイをテキトーな場所に隠し、入口付近の様子を見る。

続きを読む

勇者サマヤ物語 0012

 腹が減ったので、町を出る前に食事処に向かうことにした。

「えっ、サマヤさん? どこに行くんですか?」

 うるさい、黙ってろ。とは言わず、丁寧に解説してやる。この優しさを全国の諸君にも見習って欲しい。おお運命の戦士であるサマヤよ! 汝は……いや、ちょっと今回はここまでにしておこう。

続きを読む

勇者サマヤ物語 0011

 ミナカタ邸に着いた。きらびやかな装飾を施された住居が、高めの塀に囲まれている。金に物を言わせたような見た目だが、これはミナカタ本人の趣味なのだろうか。だとしたら、少しだけ幻滅だ。

 塀には表札が付いていた。大きな文字で『ミナカタ』と、そしてその下にとても小さな文字で『スカミット』と書かれていた。家族の名前だろうか?

続きを読む

勇者サマヤ物語 0010

 ふとした思い付きで書き始めた手記も、ついに十ページ目を迎えた。ちょっと嬉しい。最初は五ページ目くらいでやめようと思っていたのだが……。この手記の一部を公開した後、登場人物達の反応を窺うのが、俺のちょっとした娯楽になっている。

続きを読む